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人材の流動化を求められる時代。「ジョブ型雇用」とは?
近年、DXやグローバルの事業の推進のための国際的な競争力を高めていく必要がある中で、これまで日本で一般的だった終身雇用制度や年功序列といった制度が見直され、大手企業を中心に国際標準である「ジョブ型雇用」へ転換する動きが活発化しています。
ジョブ型雇用とは、「仕事に人を合わせる」雇用システムのことです。これまでの「人に仕事を合わせる」雇用システムであるメンバーシップ型雇用とはさまざまな違いがあります。
この記事では、ジョブ型雇用の背景と動向、メンバーシップ型雇用との違いなどについて詳しく解説します。
ジョブ型雇用の背景と動向
現在、ジョブ型雇用への関心が急激に高まりを見せています。その背景には新卒一括採用中心の見直しや国際的な競争力を高める必要性があり、大手企業を中心に、段階的にジョブ型雇用が広まっています。
ここからは、ジョブ型雇用の背景と動向について見ていきましょう。
過度な新卒採用への偏りの見直し
日本企業は古くからメンバーシップ型雇用を用いており、ほとんど新卒採用が中心でした。
新卒採用は将来の幹部候補として採用できることや、企業文化を継承しやすいというメリットがありますが、現代日本は少子化の影響によって新卒人材の争奪戦は厳しさを増しており、人材獲得の難易度は上昇。さらに、終身雇用や年功序列といった日本特有の雇用慣習は崩壊しつつあり、新卒採用のみを重視する考えが形骸化しつつあるという指摘もあります。
人生100 年時代を踏まえ、働く意欲がある労働者がその能力を十分に発揮できるよう、雇用制度改革を進めることが必要。
特に大企業に伝統的に残る新卒一括採用中心の採用制度の必要な見直しを図ると同時に、通年採用による中途採用・経験者採用の拡大を図る必要がある。
出典:「第5回 今後の若年者雇用に関する研究会資料 資料2 参考資料」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000634511.pdf)
厚生労働省が公表する『第5回 今後の若年者雇用に関する研究会 参考資料』でも、上記のように言及されているように、これまでの新卒一括採用に加えてジョブ型雇用による中途採用を積極的に組み合わせるなど採用方法の多様化が求められています。
国際的な競争力を高める必要性
グローバル化が進む中で、企業は国際的な競争力を維持・向上させる必要性が生じています。
近年では、少子高齢化による労働人口の減少の影響を受け、さまざまな業界が深刻な人手不足に悩まされています。
ジョブ型採用であれば、専門的な仕事に集中できるためスキルを磨きやすく、専門職の人手不足解消につながると考えられています。
国際的な競争力を高め、市場で勝ち抜くためにも、ジョブ型雇用は有効な手段の一つといえるでしょう。
コロナ禍によるテレワークの浸透
新型コロナウイルスの感染拡大の影響による、テレワーク・リモートワークの浸透もジョブ型雇用が注目される理由の一つです。
管理者の目が行き届かないテレワーク化では、社員が自律的に働くことが求められます。そこで、「一人ひとりが取り組むべき業務内容を明確にさせたい」というニーズが生まれました。
あらかじめ職務内容を明確に決めた上で雇用するジョブ型雇用は、このニーズと合致したシステムといえます。
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用は、雇用のあり方や人材配置の考え方において異なるアプローチを取っています。日本的雇用と呼ばれるメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用は、正反対ともいえる仕組みです。
メンバーシップ型雇用は、従業員を特定の部署や職種に所属させ、長期的な雇用関係を重視します。一方、ジョブ型雇用では、プロジェクトや業務の都合に応じて柔軟に人材を配置するため、よりフレキシブルな雇用形態といえるでしょう。
以下は、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違いを表にしたものです。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 | |
---|---|---|
特徴 | 仕事を人に合わせる | 人に仕事を合わせる |
昇進・昇格 | 実績重視 | 勤続年数や年齢を重視 |
賃金 | 職務評価で決定 | 年功的に上昇 |
キャリア形成 | 個人の意思が尊重される | 会社が主導となる |
人材の流動性 | 高い | 低い |
採用 | 新規ポジションや欠員の補充が中心 | 新卒一括採用など定期採用が中心 |
ここからは、それぞれの雇用システムについて詳しく見ていきましょう。
メンバーシップ型雇用とは
メンバーシップ型雇用とは、職務内容や勤務地を限定せずに雇用契約を結ぶシステムのことです。終身雇用・年功序列を前提に長期的に人材育成を行うのが特徴で、日本独特のシステムであるともいわれています。
スキル・能力よりも人間性やポテンシャルを重視した採用を行うメンバーシップ型雇用は「人に仕事を合わせる」雇用システムともいわれています。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用は、職務内容・勤務地・労働時間をあらかじめ決めた上で雇用契約を結び、雇用された側はその契約の範囲内でのみ働くというシステムです。
欧米を中心に世界的に導入されている働き方で、企業はプロジェクトや業務の都合に応じて必要なスキルやリソースを柔軟に調整することができます。
政府も職務給(ジョブ型雇用)の構築・定着を目指している
日本政府は、労働市場の活性化やグローバル競争力の向上のために、職務給(ジョブ型雇用)の構築と定着を目指しています。
「職務給」とは、成果や役割に基づいて適切な報酬を設定する制度であり、従業員の貢献度や成果に応じた公正な評価と報酬体系を提供するものです。
内閣官房 令和5年2月開催「新しい資本主義実現会議(第14回)」資料1 基礎資料では「日本企業がジョブ型雇用を導入する理由」について、以下をあげています。
- 職務内容に応じた処遇の適正化
- 高度専門人材の獲得
- 優秀な若手の抜擢
- 優秀な人材の社外への流出防止
- グローバル化への対応
多くの日本企業がジョブ型雇用への転換の必要性を感じている一方で、日本企業のジョブ型雇用の導入見込み企業の割合は管理職層(ラインマネージャー)で15%、非管理職層(総合職系)で8%にとどまっているのが現状です。
出典:「新しい資本主義実現会議(第14回) 資料1 基礎資料」内閣官房ホームページ(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai14/shiryou1.pdf) 2023年2月15日利用
個々の企業特性に応じた導入方法の必要性
同資料では、職務給(ジョブ型雇用)の導入に際しては、企業の特性に応じて導入方法をカスタマイズする必要があるとしています。
また、導入についても一度にではなく順次導入し、改善を行いながら自社に合った方法での導入を進めていく必要があるでしょう。
決まった導入方法・制度を全ての企業に適用できるわけではないため、先行事例などを参考に、柔軟かつ個別化された導入が必要です。
まとめ
日本政府も「日本型の職務給(ジョブ型雇用)」の構築・定着を目指しており、今後さらに注目度を増していくと考えられます。人材の流動化時代といわれる現代、日本の企業はこれまでの従来型の採用方法を見直すべき時期を迎えつつあるといえるでしょう。
ジョブ型以外の採用手法については「中途採用に役立つ採用手法の種類|最近のトレンドは?」の記事でご紹介していますのでよろしければこちらもご覧ください。
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