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職場における5月病の解説とその対策法を紹介

5月の連休後に「やる気が出ない」などと感じる5月病。5月病はれっきとした精神疾患なのですが、症状が重いわけでもなく、6、7月には自然に治ることが多いことから「気のせい」と思われがちです。しかしビジネスパーソンがこれを発症すると、新年度スタート直後の重要な時期に仕事のパフォーマンスが落ちるので、その痛手は決して小さくありません。また企業にとっても生産性が落ちる原因になるので、対策を講じたほうがよいでしょう。この記事では5月病の症状や原因などを解説したうえで、企業や人事担当者ができる対策を紹介します。

5月病とは「症状は」

月病は正式名称ではありませんが、医学的に病気として扱われています。精神科などを受診すると、適応障害や軽度のうつと診断されることもあります。

5月病の症状の特徴は次のとおりです。

  • やる気が起きない
  • ふさぎこむ
  • マイナス思考になる
  • 頭痛や腹痛を伴う
  • だるい
  • 食欲低下
  • 集中力が低下する
  • 仕事に行けない
  • 普段より仕事を苦痛に感じる
  • 仕事に支障が出る

本人はつらいと感じますが重症化することはまれで、自然に治ることもあります。

ただ、重症化した場合は精神科や心療内科などの医療機関に受診したほうがよいこともあります。

5月病は、「なんとか乗り切ることができる」病気でもあり、「医療の力で治したほうがよい」病気でもあります。

5月病の実態「なりやすい人は、原因は」

5月病は、ビジネスパーソンなら誰が発症してもおかしくない病気です。新入社員もベテランも、仕事をしている以上5月病リスクを抱えていることになります。

ただ、なりやすい人や原因はある程度わかっています。

環境が急激に変化するとリスクが高まる

メンタルへのダメージはストレスによって生じます。そして仕事で大きなストレスをつくるのは、自分に合わない業務や長時間の残業、厳しいノルマ、職場の移動や職務の異動です。これらの職場環境の変化は新年度が始まる4月に発生しやすいものです。4月に職場環境がガラリと変わり、ストレスが増え、5月になって症状として現れるのが5月病です。

人間関係を上手に築けない人は5月病になりやすい

人間関係の変化も大きな意味では職場環境の変化ですが、ストレスやメンタルに対する影響が特に大きいのであらためて紹介します。

人間関係の構築が得意でない人は5月病にかかりやすいでしょう。

4月は人の移動が増えるので新しい人間関係が急増します。人間関係の構築が苦手な人は「また1から人間関係をつくっていかなければならないのか」と落胆するのではないでしょうか。その落胆は強いストレスに変わります。

そして社内の人間関係に変化がなくても、社外で変化する場合があります。営業担当者は取引先に出向く機会が多くなり、取引先の担当者が変われば自己紹介から始めなければなりません。営業担当者は人間関係の構築が得意な人が多いかもしれませんが、しかしそのような人でも新しい人間関係づくりは緊張するはずです。

仕事がうまくいっていないと起こしやすい

職場が動かなくても、人間関係が変わらなくても、昇格したり担当替えがあったりすると仕事の内容が変わることがあります。

新しい仕事はうまくいかないものですし、不慣れな仕事を続けているとイライラが募ります。新しい軌道に乗るまでの間、ストレスにさらされることになります。

 昇格は普通は嬉しいことですが、管理業務を苦手にする人が管理職に就くとそれがストレスになることがあります。

仕事がうまくいかないと落ち込んだり悩んだり苦しんだりします。

昇格や担当替えも新年度に起こることが多いので5月病のきっかけになります。

企業、人事担当者、上司などができる5月病対策について

5月病に悩んでいる従業員に対し、企業や人事担当者、上司、同僚などができることはたくさんあります。

そして職場や仕事を起因とする5月病は、企業の人たちでないと対策できないこともあります。積極的に対策に乗り出すことをおすすめします。

積極的に声をかける

孤立感から5月病を発症してしまう人には、職場の人たちによる積極的な声かけが予防や対策になることがあります。

「元気がないようだけど大丈夫?」という一言が救いになるかもしれません。

管理職は特に、人事異動で新たに職場にやってきた人のケアを怠らないようにしたいものです。

仕事を一時的に減らしてあげる

5月病は夏にかけて自然に治っていくことが多いので、職場に発症した人がいてもすぐに人事異動や担当替えといった大がかりな対策が必要になるわけではありません。

しかし管理職や先輩社員は、例えばその人の仕事量を一時的に減らしてあげたり、残業を免除して早く帰してあげてもよいでしょう。

気軽に相談できる窓口をつくる

社内に相談窓口をつくってみるのもよいでしょう。

そのとき気軽に相談できるようにしたいものです。例えばメールやLINEといったコミュニケーションツールを使って相談できれば、気持ちが塞がっている人でも「話を聞いてもらおうかな」と思えます。5月病は、うつ病などの重い精神疾患とは分けて対策していったほうがよいでしょう。

簡単にできるストレス対策を紹介する

メンタルヘルスに関する研究はかなり進んでいて、ストレス対策も数多く開発されています。なかには自宅で簡単にできるストレス対策もあります。

食事でも、ストレスに負けない体をつくることができます。例えばビタミンCは抗ストレスビタミンと呼ばれるほど、メンタル面への効果が期待できる栄養素です。ストレスを受けると副腎皮質ホルモンが消耗してしまうのですが、ビタミンCはこのホルモンの合成をサポートします。

ビタミンCはキャベツ、トマト、グレープフルーツなどに多く含まれています。

また運動不足の人が適度な運動を習慣にすると、気持ちが晴れていくことがあります。

人事担当者や管理職などは、こうした簡単なストレス対策を職場で広めてみてください。

簡単でも効果が期待できますし、何より会社が従業員のメンタルを気遣っていることを知らせることができます。「会社に守られている」と感じるだけで、働く人たちは安心できます。

重症化するようなら医療機関へ

5月病もメンタルの病気の1つなので悪化する可能性があります。

1日や2日程度なら、落ち込んでいても気の持ちようと考えることができますが、2週間以上連続で塞ぎ込んでいるようなら、うつ病の可能性を否定できないので医療機関にかかったほうがよいでしょう。

5月病はじきに治るので「5月病」と呼ばれるのであって、重症化すればそれはもう医療の力を借りて治す精神疾患となります。

この点は人事担当者や職場の上司たちも気にかけておく必要があるでしょう。

まとめ&考察

5月病は「簡単な病気」「深刻でない病気」と考えられがちで、実際そのとおりのこともあります。「6月に入れば治る」と思っているうちに治ることもあります。

しかし5月病を発症している間は相当苦しむことになります。正真正銘のメンタルの病気だからです。

そのため会社全体で対策に取り組むことは大切なことです。また、職場単位で5月病対策に乗り出せば、きめ細かなケアができます。

「深刻でない病気」であるからこそ、深刻化させないうちに対策を講じていきましょう。


4月 未然に防ぐ5月病対策(全国健康保険協会)(リンク:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat510/h26/260401/)(最終アクセス:2022/5/16)

執筆者
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。
北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。
取材した分野は、政治、経済、過疎化、ワーキングプアなど。
現在の執筆領域は、法務、総務、人事、会計、IT、AI、金融、ビジネス全般、抗がん剤、生活習慣病治療など。
趣味はバイクと登山。北海道札幌市在住。

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